NPO法人WINの会の講演会報告
内山弘美(東京大学大学院)




 過去10年の間に、日本の大学は、従来型の大学のイメージである「象牙の塔」から、社会に開かれた新しい大学像へと変化の兆しを見せている。大学の社会サービス、産学連携がその一例である。最近では、複数の国立大学でTLOが創設されている。
 東京大学では、昨年8月に板生清教授(新領域創成科学研究科)により環境NPO WINの会が創設された。WINの会の構成メンバーは、大学関係者の他、機械、情報、出版等の企業からの参加が目立つ。当会で対象とする「環境」の特徴は、機械とエコロジーの融合、機械と自然の融合、機械と生物の融合、ウェアラブル・コンピューターに象徴される機械と人間の融合である。
 本稿では、3月22日に東京駅のルビーホールにおいて開催された第5回講演会の様子を紹介したい。 
 樋口広芳東大教授の講演は、渡り鳥を保全するという立場から、渡り鳥に発信機をつけて渡りのルートを追跡し、渡りのパターンや経時移動パターンを明らかにするという調査を紹介した。同様に、都会のカラスに発信機をつけて行動パターンを追跡した結果、銀座・赤坂・六本木を行動範囲にしているカラスがいることが明らかになり、これらのカラスをシティ派・グルメ派カラスと名付けた。
 林泉文化女子大学教授の講演「ウェアラブル・ファッション」も、斬新なものであった。MITのメディア・ラボと世界で有数のデザイン学校の共同プロジェクトであり、ウェアラブル・コンピューターにファッション性を加えるというものである。講演の後半の部分は、メディア・ラボで行われた華やかなウェアラブル・ファッションショーの様子のビデオ上映であった。
 大和裕幸東大教授の講演は、工場現場における作業用のウェアラブル・コンピューター開発の話題であった。実際に造船所の作業現場でウェアラブル・コンピューターの検証をした結果の紹介もなされた。
 会の最後に、理事長である板生教授は、機関誌「ネーチャー・インターフェース」の第2号の予告、宮城県をフィールドとしたアグリビジネス、国連大学との共同プロジェクトの構想、及び環境プランナー養成のための授業を検討中であることを語った。





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